Web制作前に知っておきたいヒアリングの基本
Webサイト制作を決め、いざ業者への依頼を考えたとき、最初に立ちはだかるのが「ヒアリング」。

ヒアリングって、何を聞かれるのかな?こちらの考えをうまく伝えられる自信がないよ…
そう感じて、少し身構えてしまう方も多いのではないでしょうか。
ヒアリングとは、お客様の知識や言語化能力を試す時間ではありません。
お客様の中に眠っている「まだ言葉になっていない大切な想い」を、Webで伝えるために制作者とともに一緒に見つけ出し、磨き上げる時間です。
うまく説明できなくても大丈夫。むしろ「言葉にならない熱意」こそが、大切な成果を生むための種。
本記事では、Webサイト制作における
- ヒアリングの目的と流れ
- ヒアリング前に知っておくと安心な3つのポイント
について、解説いたします。
読み終えた後は、「ヒアリング=難しい打ち合わせ」という認識は消え、「理想のサイトを作るための、最も価値ある基礎固めの時間」だと感じていただけるのではないでしょうか。
ヒアリングは「成果を生む地ならし」

建物と同じで、Webサイトも最初に行うのは「地ならし」。
どれだけ美しい外観の建物でも、地盤がしっかりしていなければ、すぐにヒビが入ったり、傾いたりします。
Webサイト制作における最初の一歩、ヒアリングとは、
- どんな目的で
- 誰に
- 何を伝えたいか
を明確にする“地盤固め”の工程です。
これは、制作者が一方的に依頼者様へ質問をする場ではありません。

でも、うまく伝えられるかどうか自信ないよ。
言葉に詰まっても大丈夫。
うまく話せなくても、制作者側があらかじめ用意したヒアリングシートを基に、これから建てる「Webサイトの設計図」を一緒に描いていきます。
目的や想いを聞かずに作るデザインは、軟弱地盤に建てる建物のようなもの。
どれほど豪華に見えても、軟弱地盤では傾いてしまいます。
事業や活動、あるいは顧客にとって、これほど不安定なものはありません。

最初のヒアリングで「何を大切にしたいか」「誰に届けたいか」が明確になれば、その後のデザインも構成も迷うことなく、最短距離で目的地にたどり着けます。
ヒアリングは、信頼と成果を積み上げるための整地作業。
建物が少しずつ形になるように、対話を重ねるごとにお互いのイメージが具体的に固まり、軟弱地盤も次第に強固な地盤へと変わります。
遠回りに見えるかもしれませんが、未来を見据えた“強固な土台”を一緒に築き上げることが、結果につながるWebサイトを制作するための近道です。
① 何のために作るのか“目的”を共有

Webサイト制作で最初に確認したいのは、「なぜ作るのか」という“目的”です。
これは、サイト全体の方向を決めるための「北極星」のようなもの。
この星が見えていないWebサイトは制作者の単なる自己満足であり、成果というゴールを見失ってしまいます。
ヒアリングでは、この目指すべき「北極星」を依頼者様と一緒に見つけるための作業です。
- 新規のお客様を増やしたい
- 事業の信頼感を高めたい
- 活動内容をきちんと整理して伝えたい
- 採用や問い合わせの窓口にしたい
目的が変われば、サイトの構成や導線、使う言葉、デザインのトーン&マナーまで、根本から全て変わってしまいます。

「とりあえずホームページを作りたい」じゃ、ダメなのかな?
多くの人がそう考えますが、とりあえずではホームページはできません。
ヒアリングを通して目的を明確にできれば、ホームページは“作る”ものではなく“届ける”ものであることにわかります。
目的が明確になることで、デザイナーは「どう設計すれば、そのゴールへ最短でたどり着けるか」を論理的に考えやすくなり、
結果としてデザインも構成も、無駄なくスムーズに整います。
ヒアリングシートの「目的」欄は、単なる記入項目ではありません。
全体の設計図を描くための最初の地ならしです。

ぼんやりとした想いを、一緒に考えていきましょう。
ゴールを「言葉」に、曖昧さを排除する設計図
Webサイトの「目的」が見えてきたら、次はそれを「言葉」として具体的に定義するステップに入ります。
言葉があいまいなままでは依頼者側と制作者側で齟齬が生じてしまい、トラブルの原因に成ってしまいます。
イメージを言葉に変換
多くのトラブルは、「なんとなく信頼感を出したい」「もう少し柔らかく」といった感覚のズレから生じます。
たとえば、依頼者が「シンプルにしたい」と言っても、制作者が思う“シンプル”と、お客様が感じる“シンプル”では、意味するものが全く違うことがあります。
| 依頼者様のシンプル | 制作者にとっての「シンプル」 |
|---|---|
| 情報が整理され、迷わない構成 | 余白が多く、装飾の少ない構成 |
同じ言葉でも、頭の中に浮かべている“絵”は人によって全く異なることがあるため、具体的に定義することが重要になります。
言葉をデザインに変換
この言語化の作業は、依頼者のためだけでなく、制作者のためでもあります。
ゴールが明確な言葉で定義されていれば、制作者は「どんな色・レイアウト・トーンが最適か」を正確に判断し、サイトの機能を最大限に高める表現を追求できます。

なんだか難しそうだな
難しく考える必用なんてありません。
「落ち着いた感じ」「安心して見てもらえる雰囲気」など、思いついた感覚の断片をいくつか並べて見てください。
その“感覚の断片”をつなぎ合わせていくと、成果につながる「建物」の形が見えてきませんか?。
ヒアリングとは、単に「イメージをすり合わせる作業」ではなく、“言葉の設計図”を一緒に書き上げる作業です。
②言葉にならない部分の “想い”を引き出す

目的やゴールが整理できたら、次はWebサイトに魂を吹き込む「想い」を聞きます。
Webサイトのデザインは、情報を並べる作業ではありません。
依頼者様の価値観や事業への姿勢を色や形で表現する作業です。
例えば、同じ「学習塾」のWebサイトでも
- 「静かに集中できる空間」を大切にする教室:ブルーやグレーを基調とした余白美
- 「楽しくワイワイ学ぶ雰囲気」を伝えたい教室:暖色系と生き生きとした笑顔の写真

その違いを決めるのが、「言葉にならない想いや価値観」の部分。
ヒアリングにおいて、一見デザインとは無関係そうな雑談の中に、大切なヒントが隠れていることはよくあります。

「どんなお客様に来てほしいか」「どんな声をもらえたら嬉しいか」あまり深く考えたことなかったな。
- なんとなく温かい雰囲気がいい
- 落ち着いていて信頼できる感じにしたい
そんな一言がブランドの世界観を決める“原石”になります。
自分のことはわかっているようでわかっていないもの。
対話を通して、事業の強みや弱みが見えてくることもありますし、断片的な感情やエピソードから見えてくることもあります。
最高のWebサイトは、単なる情報源ではありません。
「言葉にならない想い」が、デザインの中で息を吹き返したとき、“心でつながるWebサイト”になります。
想いの「キーワード」を拾う
ヒアリングの中で最も大切なことは、お客様が何気なく口にした言葉やエピソードの中に潜む“キーワード”を見つけることです。
それらの言葉が、後のWebサイト全体のトーンを決める基礎になります。
感情の断片を「単語」で固定化
会話の中から「感情の欠片」を拾い出し、整理します。
| 依頼者の想い | キーワード | 狙う効果 |
|---|---|---|
| お客様とは長く付き合いたい | 誠実・温かい・落ち着く | 継続的な信頼関係の構築 |
| 地域に根ざした活動をしている | 親しみ・ぬくもり・信頼 | 地域密着と安心感の醸成 |
| 若い人にも知ってもらいたい | 明るい・軽やか・動きのある | ターゲット層への強い訴求力 |
このように、キーワード化することで、抽象的な感情が具体的な指示書に変わり、色・フォント・写真の方向性が見えてきます。
キーワードを「視覚要素」に置き換える
整理したキーワードを、配色、フォント、レイアウトというビジュアルの言語に置き換えます。
| キーワード | メインカラー | フォント | 写真・レイアウト |
|---|---|---|---|
| 誠実・落ち着く | 青・グレー | 明朝体 | 余白を多く取り、整った構成 |
| 親しみ・温かい | オレンジ・ベージュ | 丸ゴシック体 | 笑顔の人物写真・自然光を活かす |
| 上品・信頼感 | ネイビー・白・金 | セリフ体 | シンメトリー構成・静かで格式ある雰囲気 |
このように、言葉からビジュアル要素へと変換する作業が「設計」。
言葉が具体的であるほど、制作者は論理的な根拠をもってデザインできます。
共通言語でブレをゼロに
ヒアリングの真の目的は、「制作者と依頼者が同じ設計図を共有し、同じ言葉で話せる状態」をつくること。
「かわいい」「かっこいい」といった感覚的な表現を「明るい」「軽やか」「丸みのある」といった客観的な言葉に置き換えることで、納品後に起こりがちな「イメージと違った」という誤解を防ぎます。
③ 訪問者の視点に立つ伝わる伝え方の設計

どんなに情熱的な思いも、どんなに美しいデザインも、「伝わらなければ、ただの空気」。
ヒアリングの最終段階は、
「どんな人に」「どう感じてほしいか」を、徹底的に訪問者の視点から整理する作業。
“自分が伝えたいこと”を“相手が受け取りやすい形”へと最適化する最後の作業です。
- 1.「伝えたい」より「伝わる」の追求
-
多くの依頼者が失敗するのは、依頼者や制作者が「何を伝えたいか」で止まってしまうからです。
しかし、結果を左右するのは“どう伝わるか”です。
伝える手段 失敗例 成功例 言葉 最高の技術を提供します あなたの悩みを解決する3つの方法 写真 会社の建物、代表の真面目な顔 お客様の笑顔、実際の仕事風景 誠実さを伝えるなら、「誠実に対応します」という文字よりも、実際に働く人の写真やお客様の声のほうが、何倍も心に響き、信頼は無言で伝わります。
- 2. 訪問者心理の設計
ヒアリングでは、依頼者と一緒に「心の動き」という行動ストーリーを一緒に設計します。
- 到着時:最初に訪れるページで、どんな印象を受けて、「ここだ!」と感じてほしいか
- 閲覧時:何を見て、どんな感情(安心・興味・期待)が動けば、次へ進むか
- 最終行動:最終的にどんな行動を起こしてほしいか(CV:問い合わせ・購入・予約など)
- 3.言葉と導線の静かな対話
「伝え方」の最適化は、文章とデザインの狭間にあります。
- キャッチコピーを論理から感情へ寄せる
- ボタンの言葉を「送信」から「相談してみる」に変える
これだけで、受け手の心理的ハードルは劇的に変わります。
Webサイトは単なる“情報発信ツール”ではなく、訪問者と静かに対話する優秀な営業マンです。
言葉と導線の設計
「伝えたい」ことが整理できたら、次に考えるべきは、訪問者をゴールまで迷わず安心して導く導線を考えます。
Webサイトの成功と信頼は、見た目の美しさよりも、訪問者が「迷子にならず、スムーズに動ける」構造によって決まります。
言葉のトーンで安心感を統一
デザインに一貫性が必要なように、文章にもトーンの統一が不可欠です。
サイトのどのページを開いても、同じ“声”で語りかけることで、訪問者は無意識のうちに安心感を覚えます。
強い表現の調製例
- 「お問い合わせはこちら」よりも「ご相談はこちら」のほうが心理的に柔らかい印象
- 「ご依頼ください」よりも「一緒に進めましょう」の方が、共感と安心を提供
“自分が言いたい言葉”ではなく“相手が受け取りやすい言葉”を選ぶこと。
これがWebサイトの「言葉のデザイン」です。
導線(ナビゲーション)を「心理の流れ」で設計
訪問者が次にどこへ進むべきか迷わないよう、導線設計は人の動き方”を可視化する作業です。
ユーザー行動は、基本的に以下のの3ステップで進みます。
- 関心フェーズ:キャッチコピー・ヘッダーメッセージ
- 理解フェーズ:サービス・実績・お客様の声
- 行動フェーズ:問い合わせ・購入・予約ページ
この順番を崩さず「次はこれを見れば納得できる」という流れを整えることで、訪問者はストレスなくゴールへ進めます。
導線をわかりやすく整えることは、「あなたの想いをスムーズに届ける最高のホスピタリティ」です。
CTA(行動ボタン)は“心の距離”を測る言葉に
行動を促すボタン(CTA)の設計において、最も重要なのは「押しやすさ」ではなく「心の距離感」。
初めてサイトを訪れた人にとって、「今すぐ購入」や「送信」は心理的な距離が遠く、尻込みさせてしまうことがあります。
心の余白を残すCTAの例
- まずは資料請求
- 気軽に相談する
- サービスをもう少し詳しく見てみる
こうした“心に余白を残す言葉”を選ぶことで、訪問者の不安を取り除いて言葉と構造を整えれば、想いは抵抗なく届き、信頼という成果へとつながります。
まとめ 一緒に「想いを形にする」時間を大切に

ヒアリングは、単なる情報整理や仕様確認の場ではありません。
依頼者様の「まだ言葉になっていない想い」を、Web上で最も伝わる形にしていくための共同作業。
どんなに優れた技術や美しいデザインを用いても、その根底にある「伝えたい想い」が希薄であれば、見る人の心には届きません。
逆に、想いを深く掘り下げ、磨き上げ、デザインとコンテンツに込めることができれば、Webサイトは生命力を持ちます。
- 誰に
- 何を
- どう伝えたいか
これを焦らず、言葉を尽くして徹底的に見つめ直して完成したWebサイトは、あなたの想いを24時間休まず語り続けてくれる、「もう一人の優秀な営業担当」へと変化します。。
